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財産の管理

債権回収

 売り先(顧客)が売掛金を支払ってくれない。企業にとって、これは、深刻な問題です。
 そのようなトラブルにどのように対処するかがここでのテーマです。

 一般的に、売り先(顧客)が売掛金の支払を拒む場合として考えられるのは、まず、契約不成立やこちら側の債務不履行を理由とする場合(例.商品を頼んだ覚えはない、頼んだものと違う商品が届けられたなど)があります。
 事実こちら側に債務不履行があった場合、例えば、現実に送付した商品が間違っていた場合などは、注文のあった商品を届けるほかありません。

 しかし、こちら側はきちんと債務を履行しているのに顧客がそれを否定する場合、例えば、注文のあった商品を届けているのに、顧客がそれを否定し、代金の支払を拒否する場合、どうしたらよいのでしょうか。

 そうした場合、届けた商品が注文のあった商品であることをきちんと証明する必要がありますから、日頃から、取引内容を書類で残しておくほかありません。

 ただ、取引内容を書類で残すといっても、どんな書類を残したらよいのでしょうか。
 まず一番に重要なのが契約書です。顧客との間で成立した取引の内容(商品名、商品の数量、商品の引渡時期、代金、代金の支払時期など)を明記した契約書(売買契約書、請負契約書)がこうしたトラブルを防ぐ第一歩となります。
 しかし、重要な取引ならともかく、顧客との日常の取引で契約書まで作成しないという企業も多く見受けられます。そういう場合であっても、日常的な取引でやり取りされる次のような書類だけは、確実に残してください。

 まず、発注書受注書(注文請書)です。顧客からの発注があり、こちらの受注があって、はじめて契約が成立するといえるのですから、発注書と受注書は、契約書に代わりうる重要な書類です。
 ただ、発注書は、顧客側が出す書類ですから、存在しない場合もありましょう。そこで、こちら側だけで準備できる受注書は、必ず作成しましょう。

 次に、商品の製造を請け負った場合、仕様書も重要な書類となります。
 顧客が、こちらが製造販売した商品の設計・内容・性能・デザイン等について、顧客の注文したものとは違うとクレームをつけてきた場合、仕様書は、重要な証拠となりえます。そのために、顧客に対して、商品がどのような設計・内容・性能・デザインを有するか、事前に仕様書を提出し、こちらの仕様書の控えには、その設計・内容・性能・デザインを了承した証拠として顧客の署名をもらっておくことが重要です。

 さらに、納品書も重要な書類のひとつです。商品を顧客に引き渡しているかどうかは、納品書の控えに顧客の署名をもらっておくことで容易に証明できます。

 以上、売掛金管理の第一歩は、取引関係の書類をきちんと管理し、証拠を残すということが重要です。

 しかし、顧客が契約の成否やこちらの債務不履行を理由に売掛金の支払を拒む場合より実際に多いのは、相手方の資金繰りなど相手方の事情によって支払をしてくれないという場合でしょう。
 以下には、それぞれの場合に、どのように対処すべきか、簡単な交渉術も含めて、解説したいと思います。

債権回収のQ&A

Q1.支払の期限が来ても、売り先(顧客)が売掛金を支払ってくれません。どうしたらいいですか?
 支払の期限が来ても、売り先が売掛金を支払ってくれないという場合、当然、訴訟や支払督促など法的手続を取ることは可能です。しかし、いきなり法的手続をとるよりも、その前に、売り先がどういう理由で支払をしてくれないのか、その理由を確認しましょう。
 支払をしてくれない理由が先にみてきた理由ではなく、どうも売り先の資金繰りがよくないというような売り先側の理由による場合、おとなしく支払を待つというのではなく、こまめに催促しましょう。
 売り先にすれば、苦しい資金繰りの状態で、複数ある支払先の中から、おそらく優先順位をつけて支払っているはずです。
 こまめに支払を催促されれば、売り先からは、当然うるさい顧客とみられ、支払の優先順位をあげてくれる可能性も十分あります。
 また、催促は、電話や文書という手段に限らず、直接売り先を訪問するということも重要です。こまめに売り先を直接訪問し、売り先の担当者や社長と顔をあわせれば、売り先側も、情がわき、支払の優先順位を上げてくれる可能性が十分あります。
 そして、何よりも、売り先の担当者らと顔をあわせ、言葉を交わす中で、売り先が今どのような状態におかれているのか、他の仕入先に対する支払状況はどうかなど情報を仕入れることです。
 その情報により、売り先が任意に支払ってくれるのを待った方がよいのか、それとも強硬な手続に出るべきなのか、分析をすることが可能となるのです。
Q2.売り先(顧客)から売掛金の支払を猶予してくれと申し込まれました。どうしたらいいですか?
 こまめに売り先を訪問する中で、売り先から支払期限を延ばしてくれと頼まれた場合、支払期限を延ばした方がよいか、それとも、あくまで支払を求めるべきか。

 これは、ケースバイケースで、一律の回答を出すことはできません。
 ただひとつだけ確かなのは、「資金のないところからは回収できない。」ということです。売り先の情報を集めるにつけ、真実、売り先の資金繰りがショートしているという場合、その時点で、直ちに売掛金の回収を図ることは困難です。そうした場合、売り先に支払を猶予する代わりに、売り先(例えば、会社)の社長個人の保証を取り付けたり、他の担保をとるということも、選択肢の一つとして考えるべきでしょう。
 また、金銭での回収に見切りをつけ、他の物品や財産で代物弁済を受けるということも選択肢の一つです。
 いずれにしても、何が最善の選択肢であるかは、売り先に関し、保有している情報いかんにかかわってきます。
 保証契約書や担保設定契約書、代物弁済契約書については、ご相談ください。
Q3.売り先(顧客)の社長をようやくつかまえたら、分割弁済を申し込まれました。どうしたらよいですか?
 これも、基本的には、支払猶予を申し込まれた場合と同じです。
 「資金のないところからは回収できない。」中で、分割弁済であれば、売掛金を回収できるというのであれば、それも選択肢の一つです。
 ただ、分割弁済に応ずる代わりに、当然、売り先の社長の個人保証や担保も取っておくべきですし、他に弁済の代わりになる財産があるのであれば、代物弁済をうけるのも選択肢のひとつです。
  また、分割弁済に応ずる代わりに、その分の利息も弁済してもらうというのも考えてよいと思います。
Q4.売掛金を支払ってくれない売り先(顧客)も電話を入れたり、会社を訪ねても、相手(社長・担当者)がつかまりません。どうしたらよいですか?
 これまでみてきた全てに共通することですが、期限が到来したにもかかわらず、売り先が売掛金を支払ってくれないという場合、売り先が資金繰りに詰まっている可能性がかなり高いといえます。

 期限が到来したにもかかわらず、支払ってくれないという場合、訴訟を起こして支払請求をしたり、支払督促を申し立てたり、法的手続をとるのが本来法が予定した手続です(訴訟や支払督促については、こちらを参照してください)。

 ただ、日頃から取引のある顧客に対していきなり法的手続は採りにくいものです。
 また、顧客に少しの猶予を与えれば、売掛金の回収を図れるというのであれば、面倒な法的手続きをとるまでもなく、少しだけ顧客に猶予を与えるほうが費用対効果という点も得策です。

 しかし、顧客の社長や担当者が全くつかまらないとなれば、顧客は、場合によって倒産に追い込まれる間際ということも考えられます(他の仕入先への支払状況なども確認してください)。このような場合、間髪をいれず、法的手続をとるしかありません。とり得る法的手続としては、民事訴訟(少額訴訟)、支払督促、さらには、その後の民事執行手続(差押、競売など)です。緊急の場合は、民事保全も考えなくてはなりません。

 しかし、相手方が任意に支払ってくれないという場合、相手方の財産に対して、最終的に民事執行手続をとる必要がありますから、相手方の財産の状況を把握しておくことが不可欠となります。

 個別ケースで、どのような手続をとるのが妥当かなどについては、ご相談ください。
Q5.売り先(顧客)の代理人弁護士から債務整理の通知が届きました。どうしたらいいですか?
 債務整理にも、色々ありますが、その代表的な手続である破産手続については、「債務者が支払不能にあるとき」(破産法15条1項)開始されます(なお、破産法15条2項で、支払停止は支払不能と推定されています)。
 また、民事再生手続については、「債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」「債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」、裁判所に開始の申立をすることができるとされます。
 いずれにしても、売り先(顧客)の代理人弁護士から債務整理の通知が届くということは、売り先が支払不能ないしそれに近い状態にあることに間違いはなく、通知から破産手続や民事再生手続が開始されるまでの間に、他の債権者を差し置いてひとり売掛金の弁済を受ければ、手続開始後に破産管財人などから受けた弁済を否認される可能性が高くなります。
 また、破産手続や民事再生手続が開始されれば、その手続きの中で、他の債権者と平等に弁済(配当)を受けることしかできなくなります。
 このように売り先が債務整理を開始してしまってからでは、売掛金の満足な回収を図るのは困難となってしまいます。

 債務整理の詳細については、こちらをご覧ください。

(千賀守人)

個別的なケースについては、ご相談ください。

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